好きなものを帰りに買ってきてくれる人がいるのはこの世で最大の幸福だと思った日

scones

最近ジョン・B &ザ・ドーナッツ!の「北くんと南ちゃん」という曲をよく聴いている(MVがまたとても良い)。これはものすごい名曲だ。

メンバー全員がソロを歌う部分の曲調の変化が抜群に個性的で痺れる。私は最近、菅原龍平さんという方の作曲の才能にも痺れている。その件は、またゆっくり話す時があるかもしれない。今回の話は別。

それで、ジョン・B &ザ・ドーナッツ!の曲を色々聴いていて「ドーナツ」という曲の歌詞の中に

なんてことない君が好きだから、買って帰るよドーナツ

という言葉がある。

私は聴いた瞬間この場面を想像して泣いてしまった。

なんてことない歌詞に聞こえるかもしれないけれど、好きな人に好きなものを買って帰る。好きな人が好きなものを買ってきてくれる。この二つが自分に起こることがどんなに奇跡的で美しくて素敵なことか、思い出して泣いた。

私は世界で一番スコーンが好きだ。それを知っている人は何人かいるのだけど、今までの人生で、私が好きだからと言ってスコーンを買って帰ってきてくれたのは死んでしまった父だけだった。正確には父はスコーンというものが覚えられなかったので、何故かマフィンを「はい!大好きなお菓子」と出かける度に買ってきてくれた。

「それはスコーンじゃなくてマフィンだ。」と心の中で思うのだけど「わーい!」と言って食べた。マフィンはそんなに好きじゃないけど喜んで食べた。だってそうやってマフィンをニコニコ差し出す父が可愛いし、優しいし、自分を大好きなのが分かるから。正直、また買ってきちゃったよ。。と思うこともあったのだけど絶対に言わなかった。嬉しい気持ちの方が断然上だったから。

でも、父が居なくなって気がついたけど、父以外に私の好きなものを買って帰ろう!と思ってくれる人は他にいなかった。もしかしたら死ぬまでそんな素敵なことはもう起こらないのだ。

「ドーナツ」という歌はそんな大袈裟な風には歌っていないけど、この世の素晴らしい誰にでも起きるわけではない奇跡を歌っているなと泣きながら思った。

この先の人生で好きじゃないマフィンだろうと何であろうと「これ好きだから買ってきたよ」と差し出されることは最大の幸福だが、もうそれが起きないかもしれないなんて悲しいことだ。

もし、あなたにそれが起こっているのなら、あなたは幸福だ。おめでとう。

私にも遠い昔それがあったことは幸福だよね。

 

Lunch with Elizabeth ll