本日は、初台の NTTICCで行われた Ensembles Asia Symposium に参加してきました。
このシンポジウムは大友良英さんがアーティスティック・ディレクターを務める「アンサンブル・アジア」と、ICCで展示中の「大友良英 音楽と美術のあいだ」の関連イヴェントです。
「アンサンブル・アジア」とは、「アジアにおいて、音楽のフロンティアと音楽を楽しむ人とをつなぎ、ヒエラルキーのない、誰もが参加できるオーケストラをつくって、新たな音楽の可能性を世界へ発信していく」交換プロジェクト。「アジアン・ミュージック・ネットワーク」、「アジアン・サウンズ・リサーチ」、「アンサンブルズ・アジア・オーケストラ」の3つのプロジェクトによって構成されています。大友さんが選んだ「アジアン・ミュージック・ネットワーク」のプロジェクト・ディレクターである dj sniff(水田拓郎)氏、シンガポールの音楽家 ユエン・チーワイ氏、「アジアン・サウンズ・リサーチ」のプロジェクト・ディレクター Sachiko M氏に参加アーティスト米子匤司氏を加えた5人によるトークシンポジウム。司会は、ICCの畠中実さん。
私は、ICCの畠中実さん司会のイヴェントに何度も参加していますが、畠中さんの柔らかい進行と知識の深さに毎回大興奮。このようなイヴェントを無料で毎週のように行っているICCは、私の神ギャラリーなのです。大友良英さんのトークイヴェントも過去2回参加していて面白い事は保証済み。今回は、dj sniffさんやユエン・チーワイさんがどんな話をするのか期待して行きました。
大友さんが、いつものように崩したオープニングトークをした後、次にマイクを向けられた dj sniffさん、その話が素晴らしかった事!私は、この瞬間に彼が間違いないアーティストと確信しました。何故かというと、私は、多くのアートイヴェントに参加して、カッコいい作品、もしくは好きな作品を創っている作家は、間違いなくトークが完璧です。自分の考えや作品について、よどみなくはっきりと、枝葉も交え話、どんな話題を振っても完全に自分の世界に沿って話をする事が出来ています。だから、こういう場で話をしないとか、照れたり、内輪受けな会話しか出来ない人は信用していないのです。
dj sniffさんは、美しい日本語で、完璧に「アジアン・ミュージック・ネットワーク」についてや、今回の感想、次の課題のようなものについても語っておられました。もちろん、今は香港を拠点に、過去にはアムステルダムに長く滞在し、仕事をされているので英語も完璧です!ああああ、なんてカッコいいのでしょうか!私は、美しい日本語を話す人が好きなのでいっぺんに好きになってしまいました。
その後も、ユエン・チーワイさんは英語で(通訳が入ります)、はやり積極的に話をされており、繊細な感じの風貌と相まって素敵でしたし、Sachiko Mさんが、弾丸トークなのは、前に参加したトークイヴェントで知っていたので驚きませんでしたが、自分のディレクションするプロジェクトをどんな風に進めていったのか、映像アーカイヴも交え、大変分かりやすく説明してくださったので、プロジェクトへの興味がいっそう増しました。更に、「アジアン・サウンズ・リサーチ」参加アーティストの米子匤司さんも不思議な雰囲気を漂わせつつ感想を説明され、私は、米子さんが大阪で主催しているという自宅スペースの「FLOAT」にも行ってみたくなりました。
私たちは、欧米の音楽シーンを追いかける事が多く、アジアの隣接する国のアーティストが一体どんなものを発信しているのか?どんな環境で何が生まれているのか?まったく知ろうとしていなかった所があります。今回の話を聞いて、アジアらしさに全くこだわらないアートの場として、隣国の現状を知る不思議な機会となりました。
このプロジェクトは、国際交流基金の主催事業のため、アーティストの招集もアジアに限定されているそうです。その事のもどかしさ、アジアという言葉故の先入観等の苦労についての話も面白く、プロジェクトは5年続くのですが、アジアに限らず、色々な国や媒体からの誘いも受けているそうなので、なんとか枠を超えた広がりになって行くと面白いですね。
最後の質問コーナーで、先入観で見られる事の辛さに対して「辛く考えるんではなくて、その事にただ気がつけばいい。僕は薄目で生きてます。毎日たのしくてしょーがない」と大友さんが答えていたのが、案外みなさんの日頃のお悩みにお助けになったのでは?と。
もう一つ、こういう事を私もやりたい。大物にならないとお誘いはこないのか?という若い方の質問に、「今回の事は、偶然が重なって僕に声がかかったけれど、こういう活動は、僕は20年以上自費でやってきた。自分が良いと思っている事をやり続ける事。今はインターネットがある。自分が発信すれば良いのでは?時間はかかります。20年」とおっしゃったのも胸に残ってます。誘いを探したり待ったりではなく、やれる事を自分発信でやっていくしかない。それを続ける信念が必要。耳が痛いけど、実際に実現して来た先輩のありがたいアドバイスですね!
本当に、参加して良かったです。
この後も、コンサートイヴェントがまだ開催されます。そちらも出来るだけ参加したいです。
それではー!