大林宣彦監督への感謝の言葉

 "Dandelion" copyright by Kanoko

4月10日に大林宣彦監督が亡くなりました。ご夫人の大林恭子さんが発表したコメントで監督の最後の言葉と言うのを読んで、色んな想いを急激に思い出しました。その言葉の中に「岩井君、手塚君、犬童君、塚本君たちが映画をつないで平和な世の中に……」という言葉がありました。手塚くんとは手塚眞さんのことでは?手塚眞さん(手塚治虫さんの息子さんでビジュアリスト、映画監督)を初めて知ったのも大林監督の「ねらわれた学園」でした。それはそれは異様な高校生の役で、もう本編より印象に残っているくらいです。監督が生み出した色々なものが繋がって、私に影響していたのだなと思い出しました。

幼い頃見た映画や音楽がその後の人生を決定づけることは多いと思います。私の人生にはヨーロッパ映画が大きく影響していますが、唯一日本人の映画監督で大林宣彦監督の作品が大きくどころか、常に芯の部分を通る感覚を決定していたのです。監督はデビュー作からもうずっとホラーファンタジー、反戦、思春期の不安定さ、故郷、そう言うものの表現を貫いてこられました。幼い頃、監督の映画を観ていなかったら私はもっと違う絵を描いていたかもしれません。

私は監督の二つの映画に衝撃を受けました。「時をかける少女」と「ねらわれた学園」です。青春映画のようで、全編不思議な空気が漂っていて、これは何か全く別次元のものを見せられている。そんな感覚でした。変な人や不思議な両親、祖父母が出てきたり、部屋の様子、話し方、その全てが「普通」ではなかったのです。私はこの不安定なゆらぎのような感覚を自分の中に宿しました。

写真の絵のタイトルは「Dandelion」。ダンデライオンは映画「時をかける少女」の主題歌ダンデライオンから取りました。実はこの絵は「時をかける少女」の少女の心をベースに描かれているのです。私はよく自分の絵をみて感極まって泣きます。一番泣くのがこの絵です。ダンデライオンの歌を心に浮かべてこの絵を見ていると泣けて泣けて仕方がありません。映画「時をかける少女」の最後のシーン、全編に漂う危うさ、純粋さ、皆さんはご覧になったことありますか?もう史上最高に素敵なのです。

随分と大人になってから、かなり辛い時期に、区役所に用があった帰り、辛くて帰れなくなってただ座って時間が過ぎるのを待っていたことがありました。すると区役所の広場の大画面に突然大林監督が現れ、優しく何かを話し始めたのです。私は偶然真正面の椅子でそれを聞くことになりました。そして泣いてしまいました。話の内容は全く覚えていないのです。でも、その時現れた監督の言葉で私は救われました。きっと大丈夫だと思えました。偶然かもしれないけど、そのこともお礼を言いたいです。

私は一生、監督の映画のような、この心震える気持ちを持って生きていけるのです。大林監督のお陰です。大林宣彦監督、私の人生に現れて、素晴らしい作品を与えてくださってありがとうございます。あの区役所での言葉をありがとうございます。安らかにお眠りください。

 

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