エスパス ルイ・ヴィトン 東京でエキシビション『Le fil rouge(赤い糸)』展を観ました。ミュンヘン、パリ、東京の3都市での共同エキシビション。糸を媒体あるいはコンセプトとして作品に取り入れた8人の作家作品を3都市で展開するというものです。
東京では、さまざまな手法・解釈の集約としてガーダ・アメール、マイケル・レデッカーによる糸の「絵画」、タティアナ・トゥルヴェによるインスタレーション、そしてハンス・オプ・デ・ベークによる新作映像が3館を結ぶ作品としてミュンヘンおよびパリにて同時上映されます。
エスパス ルイ・ヴィトン 東京の象徴的空間を使っている上の写真は、タティアナ・トゥルヴェによるインスタレーション「250 Points Towards Infinigy / 2009」。糸のように見えて固いワイヤーが本来揺れるはずのおもりを吊るした糸が空に浮いた状態を作り出しており不思議。雨のように空間を埋めているようでもありました。
上の作品は、ガーダ・アメールの「Color Misbehavior / 2009」。キャンパスに刺繍を施した作品です。女性の顔が微妙に織り込まれています。
私は、絵画を男性が生み出した言語だと捉えているので、絵画を女性の立場から「書き」ます。私は「高い位置にあるもの」と「低い位置にあるもの」、アートとクラフト、そして具象と抽象の対比に興味を掻き立てられます。私は油絵における男性的なこれまでの歴史と、女性の伝統的な家庭的活動の分け隔てを突き詰めるのです。そしてその違いを強調すると同時に、その境界を曖昧にするのです。
と作家は言っています。その意味をみいだすというよりは、単純に心地よい作品と思いました。
私が一番印象に残ったのは、ハンス・オプ・デ・ベークによる新作映像「The Thread / 2015」でした。写真撮影は不可だったので写真はのせられませんが、作品の解説を引用します。
中国には、時間や場所、状況等という要因に関わらず、「出逢う運命にある2人を繋ぐ見えない糸がある」という諺があります。その糸はピンと張ったり、もつれたりすることもありますが、決して切れることはありません。この単純明快な比喩を出発点とし、私は、共に歳を重ねるパンク少女・少年を題材に、映像で読む愛の詩のビデオ作品を作りました。この作品の世界では、愛と死は紙一重なのです。この映画は、形式的にも主題的にも、黒装束の人形遣いが大きな人形を操って悲劇的な(恋愛)話を繰り広げる伝統的な日本の文楽を参考にしています。
運命の糸で繋がったパンクロックのカップルが死を迎えるまでの悲劇的な作品。黒子の人形遣いが動かす人形の、その動作の切なさ、結末を暗示するような音楽、パンク衣装がちぐはぐな年老いた二人、それでも愛し合っている姿。死んでゆくパートナー。残された自分。とにかく悲しい映像でのめり込んでしまいました。やはり私はこういう胸を掴まれるような作品が好きです。私もビデオ作品を作りたくなりました。ぜひ会場で実際にご覧ください。
常に面白いキュレーションで私を刺激してくれるエスパス ルイ・ヴィトン 東京。ありがとうございます!
『Le fil rouge(赤い糸)』展は2015年5月31日まで。無料。