今後の世界を表現することについて

ずっと考えていることがある。

今ウィルスと対峙している世界の人々。理由があってマスクができない方はいらっしゃるけれど、今後もう一生マスクをして生きていくかもしれない。少なくとも今はそんな状況。

映画界の俳優たちも日常はほとんどマスクをして出歩いていて、Mail Onlineなど見ると(私は英国の情報入手にこのサイトたまに見る)ちょっと見誰が写っているのか判断できないくらいだ。

それで何が言いたいかというと、そろそろ海外では映画の撮影も再開しはじめているけれど、撮影風景を見ると楽屋ではマスクをしているけど、実際のスチール写真を見るとマスクをしていない。つまり、映画の中ではコロナは存在していない設定なんだね。でも、そんな映画を観て私達は今までのような感情を持てるのかと考えている。

例えば誰かと誰かが恋をする映画は多い。出会ってキスしたりするっていうのが映画の定番だけど、「えーーっと、待って待って、そもそもマスクは?オフィスなんてそんな人いなくない?リモートは?バーは夜10時に閉まっちゃうよ?マスクしてないお店は今やどの業種にもないけど?そんなくっついて話していいの?あ、ハグしてる。キスしていいの?」もう何から何まで現在の私たちの置かれた世界と全く別の世界を見せられちゃうことになるでしょ?それでも映画ならいいのかな?映画製作者は現実と違うスペース映画みたいにコロナのない世界を作りたいと思うのか?とか。。

私は特に、街角で起きる日常を描いた作品が好きだから、これから創られる映画がどんなものになるのかものすごく注目している。誰が初めてほぼ全員マスクをしている映画を撮るんだろう。とか。撮らなくてもいいんだけど、でもやっぱりそうなる可能性もあるよなあって思う。

私は、人を描いてきたのだけれど、今は全くその部分に手がつけられない。何を描いてももうそんな世界は存在していないから。だからって、マスクを描くことが面白いとも感じない。ただただ感情が無になっている。

今までと変わらない世界を創作する人もいると思うし、それでもいい。

ただ、何か目の前の物に全く興味を持てなくなった人達もいるだろうね。

 

「今まで通り、粛々と制作活動を続けるみなさん」と呼び掛けられることがあるのだが、、結構その部分に悩んでいる人は多そうだ。

あとは、最近の村上隆さんとか、老いること、創作意欲、体力の衰え、そういう否応ない人間の通る道との苦闘がありありと伝わってきて、それはそれで正直でいいなと思う。

マスクの私。もう口をお見せする日は来ないんじゃないかと思ったり。思わなかったり。

Kanoko with mask