相手も自分も大事に想う

rain at GLITC

八重洲地下街のエリックサウスが珍しく空いていたので久々にミールスを食べた後、同じ地下に北海道アンテナショップがあったので覗いてみました。懐かしい北海道名産品がかなり網羅されていたので感激して見ていると、「塩ホルモン」が売っていました。それを見た瞬間、また両親の記憶が蘇りました。

昔、私が里帰りした時、父が少し遠い焼肉屋さんに連れて行ってくれました。その時父が「お母さんの具合が良くない時に、よくここに連れてきてホルモンを食べさせた」と言っていました。一時期、母は薬が体に合わなくて、かなり弱っていたいました。そんな弱った母を元気にしたくて遠くの焼肉屋さんまで母を連れてきて、母が大好きなホルモンなら食べてもらえると思った父と、食欲がないけれど、焼肉屋さんにわざわざ連れてきてもらっていつもより沢山のご飯を食べたであろう母の姿を思い浮かべると胸がぎゅーっとなりました。父は母を大切にしていたのです。そして、母は元気になりました。その姿を、塩ホルモンを見て思い出しました。

その後、また丸善で偶然立ち読みした吉本ばななさんの本の中で、「当時付き合っていた彼の誕生日にカウンターの美味しい寿司屋さんを予約した。彼も行くと言っていた。でも、当日彼に全く連絡がつかなくなって、連絡がついた時には彼は泥酔していて寿司屋に来られる状態ではなかった。そういうことはよくある事で、いざ当日になるとそのイベントへの対処が怖くなって酒を飲んで逃げる。という彼のいつもの状態だった。予約してしまった寿司屋へ自分は行こうと思ったけれど、急な誘いに友人が捕まらない。どうしても一人で寿司屋になんて行きたくない。そんな時、仲が良いとは言えなかった母親が、なぜかその時だけは、電話の声を聞いて即「行っても良い」と返事をくれて、人生で最初で最期の二人だけの食事をした。「彼と喧嘩したのか?」と聞かれた。それには答えなかった。」正確ではないけれど、こんな内容のことが書いてありました。

私は、この時のばななさんの気持ちが自分のことのように感じます。きっといつも彼にこんな状態で逃げ出されていた。それでも好きだったから許していた。でも知らないうちにばななさんは傷ついていたと思う。寿司屋に自分だけで行こうとして、でも一人でなんて行きたくなかったというこの時のばななさんを思うと悲しくなります。「今なら、こんな(自分との約束から逃げるような人を我慢するという、)自分を大事にしないようなことはしない。」と書いてあって、ああそういうことだな、こういう事を許していくことって、自分の心を自分で裏切っていることになるんだな。と思いました。そして、仲が良くないのに、この時のばななさんの状態をキャッチしたお母さんもすごいなと思います。

父が、母を一生懸命遠くの焼肉屋(ここでなければ絶対ダメで、どうしてもこの焼肉屋さんで一番美味しいのを食べさせたかったんだと思います。)に連れていっていたこと。体調が悪いけれど、それについて行っていつもより食べていただろう母。どちらも自分と相手の両方を大切にしていると思います。

私は、こういうお手本を見せられていたのに、自分はばななさんの昔みたいな事を自分にしていたな、と思います。

北海道の食べ物は、まだ少し昔を思い出して辛くなったりする。でも愛情もいっぱい思い出す。

ばななさんの本も、いろんな事を感じさせてくれます。また本屋で泣きました。