クジラと原風景

Oxford

ピノキオのお話は好きですか?私はピノキオが大好きだけど、同時に海とおじいさんに対するトラウマが出来てしまった物語でもあります。ピノキオが家出をしてしまった時、おじいさんがとても悲しそうでした。可哀想で可哀想でお年寄りが悲しむのを見たくない、そう感じてしまった記憶。そして、ピノキオがクジラに飲み込まれてしまったこと。その記憶が恐ろしくて海の奥深く更に真っ暗なクジラのお腹の中。そんなイメージから海が怖くて、今も海を見ると悲しくなります。ピノキオと人魚姫は悲しい記憶とセットです。

本当に不思議です。生まれた場所も海に面した町なのに、海に対する記憶はどんな海を見ても深海の真っ暗な闇を思い出してしまいます。海辺に立った時の潮が自分の足を引いていく感触。連れて行かないでと思う気持ち。

友達には海が大好きな人が多くて、沖縄には何度も旅行してシュノーケルをしたりもしたけれど、本当は怖くて早く陸に上がりたい。でもしらけちゃうから黙ってました。沖縄の明るい海さえも怖いのです。

先日、ツイッターで大きなクジラが飛び跳ねている写真が投稿されていて、そのクジラを見た瞬間にピノキオの記憶が蘇って、もしかしてこの記憶が怖さの始まりだったのかな?と思い出したのです。でも、もっともっと遥か生まれる前の記憶で深い海の底にいたのかもしれません。

写真は、オックスフォードの郊外の住宅街。大学時代にこの近くの家でホームステイを数ヶ月していました。朝、英語学校へ行く途中、こんな道を歩いている時、ああやっと戻ってこれた!地球のこの場所が本当は私が居た所だと感じました。初めての町なのに。もしかして、私は遥か昔にイギリスのこんな町で暮らしていたことがあったのかもしれません。胸が甘い香りでいっぱいになる風景です。いつまでも離れたくないような。

私は今でもリゾートにいるより建物で囲まれている時が幸せです。羽田空港から車で都内に戻る時、あのビルに挟まれた高速を走っている時やっと心がホッとします。あんまりみんなには共感してもらえないけど街が好きです。でも、東京よりヨーロッパの街を歩いている時の方が懐かしい気持ちになって落ち着きます。旅で一番好きなのは、朝早くホテルの窓から反対側の建物の窓辺を眺めて中で暮らす人たちを想像したり、道ゆく人たちの日常を眺めること。出勤してゆく人たちや配達してる人たちがもう最高!だから自然の景色より窓が見えることが何より必要です。

ああ、イギリスに戻りたくなっちゃったなー。