“マグリット展” @ 国立新美術館に行ってきました。
日本での大規模企画展は、13年ぶりというルネ・マグリット。
ずっと本物をまとめて観てみたいと憧れていた作家です。およそ130点もの作品を堪能できます。
まず印象的だった作品は、初期の「心臓の代わりに薔薇を持つ女」。この作品は、胸に薔薇の花を抱えた裸婦なのですが、その胸の印象が私の作品「Flora」に似ていてドキドキ。心臓の代わりの花というモチーフも私のイメージに通じていたので嬉しく思いました。
初期の作品は、幾らか恐怖のような物を感じます。しかし、その後、生涯を通じて描かれる作品は、グレイがかった色彩やモチーフの暗さにも関わらずどこかカラッとした印象でした。ご本人は、幼い頃母親を不幸な亡くし方をしていますが、明るくウィットにとんだ性格だったのが写真や映像からも分かります。幸福な人柄が、同じく不思議な絵画でもムンクやベーコン等とは異なる印象です。その分、私の好みとして心臓がえぐられるような感情の高ぶりは感じなかったのですが、印象深い作品も多く面白かったです。
また、マグリットは幼なじみと結婚しています。彼女をミューズとした裸婦像などの作品が大変多く、彼女が側に居たことで尚更幸福に満ちた人生だったと感じました。彼女をモデルにした「精神の自由」は他の作品に比べ透明度がある大変美しい作品でした。とても気に入っています。
誰もが知るような有名な作品は1960年代に入ってからの物が多いようでした。有名な空と雲のモチーフが最初に登場した作品の題名が「呪い」だったことに驚きました。雲の他には何も描いていないのです。それを「呪い」とした彼の気持ちがもっと知りたいです。
部屋の中から海が見える作品が大変多いです。その印象は、夢の中で部屋の端っこに立って後一歩踏み出したら海に吸い込まれて死んでしまう。そう分かっているのに端に立っている心理状態に似ていました。なんとなく彼もそういうぎりぎりの状態が何度も夢に出て来たのではないでしょうか?
不安感を表したような作品の中で、大変穏やかな気持ちになったのが「旅人」です。穏やかな夜の海の上にライオンや椅子や木、スーツ、、彼の大好きなモチーフが球状にまとまってぼんやり浮かんでいる作品です。欲しくなる作品でした。
とても良かったのが「光の帝国Ⅱ」。夜の街と街灯。なのに空は昼間の青空と雲。このちぐはぐなのに懐かしい、知っているような、私がそこに立っているような、なんとも言えない感情になる作品。マグリットも夜と昼どちらも気になるけれど、どちらが好きとも言えない。。なんていう訳の変わらない解説をしていました。でも、とっても好きです。
可愛い作品では「新聞を読む男」。これは、私の描くイラストにちょっと似ている感じがして好きでした。
全部を解説していたら何日もかかってしまいます。彼の構図は微妙に左右がずれていてちょっと人を苛つかせるような所があります。計算なのか?そういう風にしか描けないのかは謎ですが。発見して面白かった所。
もう一つ、彼のサインが面白い!大きな作品も小さな作品もほぼサインが同じ大きさで小さい!描き方はとても神経質に描いている感じです。場所も考え抜かれたと思います。色も特別です。作品の大きさとのバランスをわざと外しているようにも思ったので、これについてどなたか研究してる方はいないのかしら?サイン好きの私は気になって仕方なかったです。
そんな訳で、約3時間もかけて堪能しました。午前中に行ったので土曜日でも作品の前でじっくり鑑賞できました。これからどんどん混雑するでしょう。興味のある方は早めに行くことをお勧めします。また、会場が作品保護の為かとても寒いです。薄着はしないでお出かけくださいね!
それではー!